
主人公の名前は?
グレゴール・ザムザ
ある朝、虫になっていた青年
実は原作に「ゴキブリ」とは一度も書かれていません。
解説
ある朝、目を覚ますと巨大な虫になっていた——カフカ『変身』の主人公は グレゴール・ザムザ。旅回りのセールスマンで、変身した直後にまず心配するのが 「会社に遅刻する」ことという、なんとも切ない青年です。 実は、彼が何の虫になったのかは原作に書かれていません。ドイツ語の原文は 「ungeheueres Ungeziefer」。特定の昆虫ではなく「駆除すべき不浄なもの」を指す 広い言葉で、英訳でも monstrous vermin のように生物の種類を決めない訳が 選ばれます。ゴキブリとも甲虫とも、カフカ自身は一度も書いていません。 それどころか、初版を出すとき、カフカは版元へこう注文をつけました。 「昆虫そのものを描いてはいけない。遠くからでも姿を見せてはいけない」。 結果、表紙に描かれたのは、暗い部屋のドアから顔を覆って離れていく男の絵でした。 ちなみに作家ナボコフは、大学の講義でグレゴールを「大きな甲虫」と解釈し、 教材の本に自分の考える姿を描き込んだと伝えられています。カフカの注文とは 正反対です。姿を見せないという空白が、100年以上たっても読者の想像を かきたて続けているのかもしれません。
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